厚木基地はなぜ厚木市にない?歴史の真相と2026年現在の基地事情
神奈川県の中央部に位置し、巨大な滑走路を有する「厚木基地」。首都圏にお住まいの方なら一度はその名を耳にしたことがあるはずですが、実はこの基地の敷地は厚木市には一切入っていません。「厚木市にないのになぜ厚木基地と呼ばれるのか?」という疑問は、地元住民のみならず多くの人々が抱く長年のミステリーです。
太平洋戦争の終戦時、連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサー元帥が降り立った歴史的な地としても知られるこの場所は、現在、海上自衛隊と米海軍が共同利用する重要拠点として機能しています。米空母艦載機の岩国移転を経た現在の姿や、毎年大人気を博す一般開放イベント「日米親善春祭り(桜まつり)」の厳格な入場ルールまで、知られざる厚木基地の全貌を徹底解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 所在地と名称の真相:敷地の約78%は綾瀬市、約22%は大和市にあり、厚木市には属していません。旧海軍時代の防諜(軍事機密保護)や当時の知名度が命名の背景にあります。
- 現在の運用体制:海上自衛隊厚木航空基地と米海軍厚木航空施設(NAF Atsugi)が共同使用。主力は海自の最新鋭国産「P-1哨戒機」や米海軍のヘリコプター部隊です。
- 騒音と一般開放:空母艦載機の岩国移転により騒音は大幅に軽減。春の「桜まつり」入場には顔写真付き身分証など厳格な国籍確認が必須となっています。
なぜ厚木市にないのか?「厚木基地」命名の裏に隠された軍事機密と歴史の真相
地図アプリで「厚木基地」を検索すると、その所在地が神奈川県綾瀬市と大和市にまたがっていることがわかります。敷地面精約507ヘクタールのうち、およそ8割弱が綾瀬市、2割強が大和市で占められており、厚木市の市境からは東へ数キロメートル離れています。
では、なぜ存在しない自治体の名前が冠されているのでしょうか。その発端は、太平洋戦争中の1942年(昭和17年)に旧日本海軍が開設した「厚木海軍飛行場」に遡ります。命名の理由については、防衛省や歴史資料において主に2つの有力な説が語り継がれています。
第一の理由は、戦時下の「防諜(軍事機密の隠蔽)」です。当時、最新鋭の航空隊基地がどこにあるかを敵国に特定されないよう、あえて実際の所在地(旧高座郡綾瀬村・大和村)ではなく、相模川の対岸に位置し古くから宿場町・商業地として全国的に知名度が高かった「厚木町」の名を冠したという見解です。
第二の理由は、当時の広域地名としての利便性です。基地建設当時、大和や綾瀬は農村地帯であり、外部から見て位置を把握しにくかったため、近隣で最も発展していた中心都市「厚木」の名を代表地名として採用したという実務的な側面も指摘されています。
戦後、米軍が進駐して接収した際も「NAF Atsugi(厚木海軍航空施設)」の名称がそのまま引き継がれ、海上自衛隊が共用する現在に至るまで「厚木基地」の呼称が定着し続けています。

マッカーサー来日の地から現在へ|共同利用の役割とP-1哨戒機の配備
厚木基地は、昭和史の決定的な転換点となった舞台でもあります。1945年8月30日、コーンパイプをくわえた連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサー元帥が専用機「バターン号」から降り立ち、第一歩を記したのがこの厚木飛行場でした。基地内には現在もマッカーサー元帥の来日を記念する銅像が建立されています。
現在、正式名称を「厚木海軍飛行場」と呼ぶこの施設は、日米地位協定に基づき米海軍厚木航空施設司令部と、海上自衛隊航空集団司令部・第4航空群が共同で使用しています。
海上自衛隊側における厚木基地の最大の役割は、日本の周辺海域を監視する「対潜水艦作戦・洋上警戒監視のキーステーション」です。かつて主力だったP-3C哨戒機に代わり、現在は純国産のジェット哨戒機である「P-1哨戒機」が多数配備され、東シナ海や太平洋上の警戒監視任務に24時間体制で即応しています。
【比較データ】空母艦載機の岩国移転前後の変化と現在の騒音問題
長年、厚木基地を巡る最大の地域課題は、米海軍空母航空団の戦闘攻撃機(F/A-18スーパーホーネット等)による激しい航空機騒音問題でした。昼夜を問わず繰り返されるタッチアンドゴー訓練や夜間離着陸訓練(NLP)は、周辺住民に多大な負担を強いてきました。
しかし、日米両政府による米軍再編計画に基づき、2017年から2018年にかけて空母艦載機約60機が山口県の米海軍岩国基地へ移転を完了しました。この移転によって、厚木基地の運用環境と周辺地域の騒音状況は劇的な変化を遂げています。
| 比較項目 | 艦載機移転前(〜2017年頃) | 現在の運用状況(2026年基準) | 編集部の分析・地域への影響 |
|---|---|---|---|
| 米海軍の主力配備機 | F/A-18戦闘攻撃機、E-2C早期警戒機など約60機の固定翼ジェット機 | MH-60R/Sヘリコプター飛行隊、連絡輸送機など | ジェット戦闘機の常駐がなくなり、米軍運用は回転翼(ヘリ)が中心へ移行。 |
| 自衛隊の主力配備機 | P-3Cプロペラ対潜哨戒機、救難飛行艇など | 最新鋭P-1国産ジェット哨戒機、C-130R輸送機、各種救難機 | P-1はジェット機ながら高バイパス比エンジン採用により旧戦闘機と比べ極めて低騒音。 |
| 騒音発生状況(うるささ指数) | 爆音による窓ガラスの振動、テレビ音声の遮断が日常化(激甚指定地域多数) | 騒音測定局の年間測定値は大幅低下。大規模な騒音苦情件数は激減 | 生活環境は劇的に改善。ただし他基地からの飛来機やヘリ旋回時の低周波音は残存。 |
| 住宅防音工事助成区域 | 大和市・綾瀬市・藤沢市などの広域が国の防音工事助成対象区域に指定 | 既存助成の維持・見直し議論が継続しつつ、段階的な運用へ | 過去に施工された二重サッシや空調設備などのインフラが住宅街に残る。 |

一般開放イベント「日米親善春祭り(桜まつり)」の入場条件と注意点
普段は厳重な警備に守られ立ち入ることのできない厚木基地ですが、毎年春(おおむね4月上旬〜中旬)に開催される「厚木基地 日米親善春祭り(Spring Festival)」では、一般市民向けに基地の一部が開放されます。
会場では、米海軍や海上自衛隊の実機(P-1や米軍ヘリコプター、他基地からの外来機)が間近で見られる航空機地上展示をはじめ、本格的なアメリカンサイズのピザ・巨大バーガーが並ぶフードブース、野外ライブステージなど、まるでアメリカ本土を訪れたかのような雰囲気を味わえます。
しかし、近年の国際情勢を受けたセキュリティ強化に伴い、入場条件と身分証明書のチェックは極めて厳格になっています。条件を満たさない場合は入門ゲート(正門)で確実に断られるため、事前の準備が不可欠です。
【必須チェック】入門時に有効な身分証明書一覧
16歳以上の入場者は、日本国籍または米国籍を証明できる有効な身分証明書(原本)の提示が義務付けられています(※16歳未満は保護者の同伴が必要)。
- 単体で入場可能な身分証:
- 有効な日本国パスポート
- マイナンバーカード(写真付き・通知カード不可)
- 住民基本台帳カード(写真付き・有効期限内のもの)
- 組み合わせが必要な身分証(要注意):
- 運転免許証を使用する場合:暗証番号入力による本籍地確認、または「本籍地記載の発行から3ヶ月以内の住民票」のセット提示が必須となるケースが標準です(※IC運転免許証の券面には本籍地が記載されていないため)。
- 入場不可となる身分証の例:
- 健康保険証単体、学生証単体、社員証、写真なしマイナンバー通知カード、有効期限切れの証明書、コピー類。
また、日本国籍・米国籍以外の方は事前登録やパスポート確認などの特別規定が適用されるため、米海軍厚木航空施設の公式アナウンスを必ず事前に確認してください。
一般に知られていない盲点とネットの誤解
インターネット上やSNSで見られる厚木基地に関する代表的な誤解と、現場取材から見えた客観的事実を整理します。
誤解1:「厚木基地に行けばいつでも米軍ショップやレストランが使える?」
真相:通常時は完全な軍事施設・防衛拠点であり、基地関係者や許可証を持つ同伴者以外は立ち入ることができません。基地内のスターバックス、マクドナルド、巨大スーパー(コメサリー・PX)などを一般人が利用できるのは、春祭りなど公式に指定された一般開放日のみです。
誤解2:「艦載機がいなくなったから、もう軍用機は飛んでいない?」
真相:空母艦載機の固定翼戦闘機部隊は岩国へ移転しましたが、海上自衛隊のP-1哨戒機や輸送機の運用は毎日活発に行われています。さらに、米軍のヘリコプター飛行隊(第51軽対潜ヘリコプター航空隊など)が常駐しているほか、横田基地や岩国基地、嘉手納基地などからの連絡機・輸送機の一時飛来も日常的に存在します。

【プロの結論】基地開放イベントに向いている人・注意すべき人の判断基準
厚木基地の一般開放イベントは非日常を体感できる大人気行事ですが、広大な軍事基地ならではのハードルも存在します。来場を検討される方は、以下の基準を参考にしてください。
◎ 訪問を強くおすすめできる人
- 自衛隊機・米軍機を間近で撮影・見学したいミリタリーファン:P-1哨戒機のコクピット外観や米軍クルーとの交流など、普段見られないアングルでの見学が可能です。
- アメリカ文化・本場のフードフェスを体験したいファミリー・若者:基地内通貨(米ドルおよび日本円併用可)での豪快なアメリカングルメや、アメリカン雑貨のショッピングを満喫できます。
▲ 慎重な準備・検討が必要な人
- 長時間の徒歩移動や行列が苦手な方:最寄り駅(相鉄線さがみ野駅・相模大塚駅等)から正門まで徒歩15〜20分を要し、手荷物検査ゲートでは1〜2時間以上の長蛇の列ができることがあります。
- 公的な顔写真付き身分証明書を準備できない方:身分証の不備に対する例外措置は一切ありません。当日会場で足止めを受けるリスクがあります。
【厚木 基地】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:厚木基地の最寄り駅はどこですか?厚木駅から行けますか?
A1:小田急線・JR相模線の「厚木駅」や「本厚木駅」は最寄りではありません。一般開放時のメインゲート(正門)への最寄り駅は、相模鉄道(相鉄本線)の「さがみ野駅」または「相模大塚駅」で、徒歩約15〜20分です。
Q2:車やバイク、自転車での来場・駐車場はありますか?
A2:一般開放イベント時を含め、基地内に一般来場者用の駐車場・バイク駐輪場はありません。近隣のコインパーキングも早朝から満車となるため、公共交通機関の利用が強く推奨されます(自転車用の臨時駐輪場のみ設置される場合があります)。
Q3:基地内でクレジットカードや電子マネー、日本円は使えますか?
A3:売店ブースの多くで日本円(現金)が使用可能です。一部の米軍直営ブースでは米ドル現金や主要クレジットカードが使用できますが、Suica等の交通系IC・QRコード決済には対応していない店舗が多いため、千円札を中心に現金を多めに用意しておくと安心です。
Q4:手荷物検査で持ち込みが禁止されているものは何ですか?
A4:刃物類・火薬類などの危険物はもちろん、ドローン(小型無人機)、大型クーラーボックス、アルコール飲料、ガラス瓶類、ペット(盲導犬等を除く)の持ち込みは固く禁じられています。手荷物検査で没収または入場拒否の対象となります。
まとめ:歴史を知れば見え方が変わる「厚木基地」の現在地
「厚木市にない厚木基地」という一見ユーモラスな名称の裏には、戦時中の防諜体制から敗戦、進駐軍の受け入れ、そして冷戦から続く極東アジアの安全保障という、日本の激動の近現代史が凝縮されています。
戦闘機の移転によって激甚な騒音問題に一区切りがついた厚木基地は、現在、海洋国家・日本の防衛を最前線で担う「海上自衛隊哨戒部隊の重要拠点」として新たな時代を歩んでいます。春の親善祭りに足を運ぶ際や、空を見上げてP-1哨戒機の姿を捉えた際には、その名に刻まれた深い歴史と安全保障のリアルに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。 (出典: 厚木 基地(Yahoo!ニュース))